緋弾のアリア最新巻(34巻)感想

緋弾のアリア最新巻(34巻)感想



赤松中学著・緋弾のアリア34巻 早天の嚮導艦(ナヴィガトリア)の感想になります。

【ストーリー】

前巻に引き続き、玲の國(レクテイア)から帰還した旧日本軍の軍人にしてキンジの祖父の姉にあたる遠山雪花が、同じ境遇を持つナチス・ドイツの魔女であるラプンツェル大佐を追う---というのが今回の本筋です。

そこそこ早い段階から登場しており、キンジとはお互いに「自分のほかにもヤバいやつがいるなぁ」的視線を向け合ってニヤニヤする仲、という稀有なポジションを獲得しているにもかかわらず今回初めてカバーガールとなったカツェも活躍…するかと思いきや、この巻もメインを張るヒロインはあくまでも雪花だったようです。

雪花の精神的な変化を描きつつ、「レクテイア」や「N」をめぐる話の核心にも踏み込んでいく回です。

<キャラクターについて>

ラプンツェル

今回、キンジ・雪花と敵対することとなるのが、このラプンツェルさんでした。ラプンツェルに関しては、個人的にまず特筆したいのがそのルックスです。特殊な事情により基本的に病弱キャラであり、痩せすぎていて眼窩が落ちくぼんでいる華奢で不健康な体、そしてそれを彩る可憐な髪や相貌。この巻で挟まれる彼女のイラストを見るたびに不覚にもときめいてしまいました。実は似たような特徴を持つキャラクターが緋弾のアリアにはほかにも存在していまして、それが32巻のキンちゃん教師回で登場する明磊林檎ちゃんなわけですが、内面的な特徴としてはまったく違っていて、かたやこころを病んでいてメンヘラ気味の林檎と、かたやひとつの目的を果たすために壮大な野望を企てる自尊心高めのラプンツェルとでは反対といってもいいでしょう(とはいえ、林檎ちゃんの低い自己肯定感や抱いていた希死念慮は家庭環境の問題に起因するものであり、それがキンジによってひとまず解決されたことで内面的特徴には大きな変化があったといえます。武偵を出し抜くほどの謎のトラップ作成スキルを持っているあたり、すっかり自己肯定感バリバリになった中3の彼女が東京武偵高校を進路として選択する未来が見えなくもありません)。

ラプンツェルは、この巻で新たに明かされた情報として「Nの協力者」というプロフィールがあります(180頁)。彼女の「総統命令を完遂するためにレクテイアの神々を地球に呼び寄せ終わりなき戦争を実現させる」という目的と、キンジの知るNの目的、すなわちネモが語った「この世界の人類とレクテイア人の共存」という題目とではかなり違うように思えます。そしてそれをもとに「戦争はモリアーティに阻止されるはず」と指摘されたラプンツェル

「ああ、お前はヤツらの意志を正しく知らないのだな」

と返しています。後述しますが、これがNという組織の理解に重要な発言であることは間違いなさそうです。